ウオッカ
父:タニノギムレット
母:タニノシスター
母父:ルション
父、母ともに馬主が同じで、冠名「タニノ」がついていますが、ウオッカについていないのは馬主の「タニノギムレットより強くなってほしい」という思いがあり、(リキュールとしての)ウオッカはストレートのままがアルコール度数が強いからだそうです。
夏にデビューを果たす予定でしたが、発熱で延期になりました。デビューしたのは、2006年10月29日、京都芝1600mで出走しました。最終コーナーで先頭に抜けると、その後は他馬を寄せつけず、3馬身半つけて圧勝しました。その後、黄菊賞を経て阪神JFに臨みます。当時の人気は4番人気、1番人気はスプリント路線で活躍したアストンマーチャンでした。最終直線では、先頭を走るアストンマーチャンと3馬身くらい差がありましたが、外から脚を使って襲いかかり、ゴール直前でクビ差で差し切り、GⅠ初制覇を果たしました。
その後、順調にティアラ路線に進み、チューリップ賞では、生涯ライバルになるダイワスカーレットに出会います。チューリップ賞はウオッカが勝利しましたが、桜花賞はダイワスカーレットに敗れ2着。敗因は分かりませんでした。
桜花賞後は、牝馬はオークスに向かうのがほとんどですが、ウオッカは馬主のタニノギムレットの仔で日本ダービーを勝ちたいという思いから、日本ダービー出走を選択。桜花賞2着の結果から一時はオークスに出走するかどうか悩んだり、日本ダービー出走決定後、世間から批判の声も上がったりしていましたが、日本ダービーに向けてしっかりと調整をし、本番に臨みました。人気はフサイチホウオー、ヴィクトリーに次ぐ3番人気でした。中団で控える競馬になりましたが、最終直線で中から鋭い脚を使って、先頭に抜け出し、3馬身離してのゴール。64年ぶりの日本ダービー牝馬勝利を達成し、馬主の夢を叶えました。
「なんと牝馬ウオッカ先頭ゴールイン!半世紀以上の空白を埋めて、ついに牝馬が日本ダービーを制しました!」
しかし、日本ダービー後しばらくスランプに陥ります。宝塚記念からドバイデューティーFまで6戦出走(エリザベス女王杯は出走取消)。そのうち、秋華賞のみ3着に入り、あとは苦しいレースが続きました。翌年、ドバイから帰国後、ヴィクトリアマイルに出走。1番人気に推されるも、エイジアンウインズに一歩及ばず2着。日本ダービー以来連対に入ったのはヴィクトリアマイルで、復調の気配を示していました。その後の安田記念では、アルマダを交わして3馬身以上離して復活の勝利を果たしました。
天皇賞(秋)では、ダイワスカーレットとの最後のレースでした。ゴールは2頭全く並んで入選し、確定するまで約13分かかりました。結果、2センチの差でウオッカが1着、最後の戦いはウオッカが勝利しました。
その後、ジャパンCやドバイを経て2度目のヴィクトリアマイルに出走。オッズ1.7倍の圧倒的な支持を受けました。最終直線の坂の途中で先頭に抜け出した後、なんと7馬身差を広げて独走態勢の1着入線を披露、人気以上に応えたレースでした。そして、次走の安田記念でもヤマニンゼファー以来、2頭目の連覇を果たしました。このとき、賞金獲得額は10億円に達し、牝馬としては史上初でした。その後、ジャパンCでも勝利を果たしましたが、競走中に鼻出血を起こしていたことが判明。1ヶ月の出走停止で有馬記念に出られず、ドバイワールドカップに目標をシフト。しかし、鼻出血が再発し、マクトゥームCR3を最後に引退しました。
引退後は繁殖牝馬になり、タニノフランケルやタニノミッションなどを生みました。しかし、種牡馬との交配のためにイギリスに移った際、骨折が判明、さらに蹄葉炎も発症し、安楽死を取らざるを得ない事態に、15歳という若さで天国へ旅立ちました。
ウオッカは年度代表馬など多くのタイトルを獲得。2011年には、顕彰馬に選出されていました。
今年は15頭で行われるヴィクトリアマイル。春の古馬女王を戴冠されるのはどの馬でしょうか。
[各出走馬の見解]
ライラック
GⅠでは、3歳時のエリザベス女王杯2着の実績があります。そのときの馬場の状態は重でした。その後の、日経賞も不良馬場でしたが、4着と好走しています。このように、馬場が渋ったほうが好走しやすい可能性はあります。また、ワンターンコースよりは1周コースのほうが合う印象で、東京芝1600mでは今の力でどこまでいけるか見どころです。
フィアスプライド
前走中山牝馬Sでは、3コーナーで不利を受け、不完全燃焼に終わりました。今回、直線の長い東京に変わることは末脚を発揮しやすいので、プラスになると思います。最終追いも今までで一番よいかもしれません。展開次第です。
スタニングローズ
前走大阪杯で約10ヶ月ぶりの復帰戦。先頭で逃げましたが、最後は苦しくなりました。今回は先行馬が他にもいますので、逃げるかどうかはわかりませんが、好位を取るのが理想かもしれません。リズムよく運べるとよいのですが、距離はもう少し長いほうがよい印象です。大阪杯からどれくらいの上積みが見込めるかパドックで要チェックです。昨年のように出遅れだけは…
コンクシェル
昨年の秋は大敗続きで苦しみましたが、近2走になって立て直し、前走中山牝馬Sで初めて重賞を制しました。逃げたときは全て勝利しています。今回は決定的な逃げ馬はいませんので、ハナを切ることはできそうですが、出遅れが怖いです。また、斤量+3kgの影響も懸念材料です。どこまで踏ん張れるか見どころです。
ウンブライル
昨年のNZTでブリンカーをつけて以来、集中して走れるようになり、自身の武器である末脚を発揮できています。東京コースでは、凡走することもあるので、判断が難しいところもありますが、その時の季節はいずれも冬でした。暖かくなった今の時期でよく走り、ここでも脚が弾けるか見どころです。
マスクトディーヴァ
爆発的な末脚をもつ印象があり、秋華賞ではリバティアイランドを1馬身差まで攻めました。阪神牝馬Sでは、好位を取って勝利をしたことが収穫でした。今回も好位を取ることが理想ですが、ペースを考えるとその後ろのほうを取れるとよいかもしれません。ここを勝つことを目標に仕上げてきましたが、ゲートに課題が残るそうなので、まずは発馬が決まるかどうかです。
ハーパー
有馬記念、大阪杯ではGⅠ級の牡馬も揃い苦戦しましたが、今回は牝馬限定でエリザベス女王杯のように健闘するかもしれません。東京芝1600mは実績があり、クイーンCでは最終直線で進路が狭くなる場面がありましたが、開いてからはしっかりと追い込んで勝利しています。中距離が適性だと思いますが、ここではしぶとく残りそうな気配もあります。
サウンドビバーチェ
左回りは、中京で1回勝っていますが、右回りが合う印象があります。近2走の結果を見ると、昨年のように走れるか怪しいです。
テンハッピーローズ
実績を見る限りでは、1400mのほうが合うと思いますが、東京芝1600mでは、2回出走して2着と3着が1回ずつとマイルが必ずしも合わないとは限りません。むしろ、東京芝は合っており、馬券を外したのは1回のみです。ただ、非重賞オープンレースでは勝利経験があるものの、重賞レースではまだ3着以内に入ったことがありません。そこの判断が難しいところですが、少なくとも東京に変わることはプラスであり、健闘するかもしれません。
ナミュール
昨年のマイルCSを勝利してから、香港マイル、ドバイターフに出走し、世界の一線級の相手が揃うなか、好走しました。海外出走後の臨戦ですので、見えない疲れなど懸念材料はありますが、出走メンバートップレベルで勝ち負けになる可能性は高いでしょう。
ルージュリナージュ
4勝のうち、3勝は東京ですが、重賞では3着以内の経験がありません。まして、前走中山牝馬Sは大敗していますので、巻き返すにはチャレンジになると思います。
キタウイング
重賞は2勝していますが、近走は大敗続きです。前走リステッド競走でさえ8着に終わっていますので、ここはチャレンジになりそうです。
モリアーナ
この馬も爆発的な末脚を持っており、紫苑Sの追い込みは衝撃的でした。しかし、時折不発に終わることもあり、今回もそれがないかが懸念材料です。展開次第で上位争いに持ち込めそうです。
フィールシンパシー
東京芝1600mは2回出走し、いずれも連対以内です。重賞でも健闘しており、前走福島牝馬Sでは、勝利まであと一歩のところでコスタボニータにゴール直前で交わされ、惜しくも逃しました。ここでも健闘する可能性はありますが、鞍上がGⅠ初騎乗でどこまで戦えるか注目です。
ドゥアイズ
クイーンCまではGⅠレースを含め、しぶとく残っていましたが、クラシックに入ってからは、崩れてしまいました。その後、リステッド競走を間隔を開けながら出走し、立て直してきています。末脚を使うことはできますが、キレ味というよりは持続力だと思います。展開次第で上位争いにもっていけるかもしれません。
[予想]
◎ナミュール
○マスクトディーヴァ
▲モリアーナ
△ウンブライル
△ドゥアイズ
☆ハーパー
☆フィアスプライド
☆フィールシンパシー
☆テンハッピーローズ